企業とSDGs~どうして企業が積極的にSDGsに取り組むの?~
SDGsがメディアで活発に取り上げられる昨今、企業によるSDGsの取り組みもより一層活発になってきています。国際的な社会問題の解決を目標とするSDGsですが、どうして企業という一民間団体が国際的な社会問題に積極的に取り組むようになったのでしょうか?
今回は企業がなぜSDGsに取り組むのかについて考えていきたいと思います。さらに、実際の企業によるSDGsの取り組みもご紹介します。
Contents
企業がSDGsに取り組む意義
SDGsが目指す世界
企業がSDGsに取り組む意義を考えるにあたって、まずSDGsが目指している世界について確認したいと思います。
SDGsが目指す世界とは「誰一人取り残さない世界」です。
これまで経済的豊かさを追求してきた世界が「誰一人取り残さない世界」の追及へとシフトした背景には以下のような現状があります。
”経済的に豊かになった国がある一方で、その豊かな国に天然資源や労働力を搾取される国がある”
”人間がゴミを出し、環境破壊を招いている一方で、リフレッシュ、デトックスと言ってきれいな環境を求める”
”生まれた性別、人種などによってひどい差別を受け、苦しんでいる人がいる”
これらの問題は経済的な豊かさが幸福の十分条件ではないことを表しています。
このような現状から、
”人間のあるべき姿とは?”
”幸せのためには、経済的豊かさ以外に何が必要なのか?”ということを考えた結果、
当たり前のようで当たり前ではなかった「誰一人取り残さない世界」を目指すに至ったのです。
誰が国際的な社会問題に取り組むのか?
SDGsが目指す世界を確認した上で、次に説明したいのは、誰がこのような国際的な社会問題に取り組むのかということです。
皆さんは、国際的な社会問題に取り組む主体と言えば誰/何を浮かべますか?
国連を始めとする国際機関・国・NPO・NGO…?
このように考える方が多いかと思います。
確かに上記に挙げたような主体は間違っていません。
実際、これまで国際的な社会問題の解決に中心的に取り組んできたのはこれらの主体でした。
しかし、近年国際的な社会問題に取り組む主体として企業が積極的に動くようになりました。
なぜSDGsに企業が積極的に取り組むのでしょうか?
それは、経済活動が大きく関係しています。
今の社会問題・環境問題に企業による経済活動が多分に関係しています。
経済的な豊かさを追い求めすぎるあまり、犠牲にしてきたものも多かったのです。
だからこそ、今世界が抱える問題を解決するためには、国際機関や国、NPO、NGOなどの団体が一般市民から遠い世界で解決に取り組んでいるだけでは足りないのです。
いかに民間、一般市民にとって身近なレベルでこれらの国際問題の解決に自分事として取り組めるかが解決のためのカギになっています。
そのため、経済活動の主体として、一般市民にとって関わりの深い”企業”がSDGsに取り組むことには社会的に大きな意義があります。
企業がSDGsに取り組む積極的要因
ここでは企業がSDGsに取り組む積極的な要因の一つになっている「ESG投資」について説明します。
「ESG投資」とは
E(Environment=環境) S(Social=社会) G(Governance=ガバナンス)の頭文字をとった言葉で、投資家や金融機関が投資判断を行う上で、業績や財務的な観点のみならず、環境・社会・ガバナンスに配慮し、これらの問題に積極的に取り組む企業に資本を投下することを推奨しているもの。
企業が経済活動を行う上で必ず必要なものといえば、”お金”、つまりは”資金”です。
資金を集めるためには、銀行からお金を借りたり、投資家や金融機関等からの投資が必要です。
国連は、この企業活動に必要な”投資”に目を付け「ESG投資」を推奨する提言を出しました。
これまでの投資と言えば「利益を上げているかどうか」「負債を抱えすぎていないかどうか」といった観点が投資判断の主流でした。
しかし、利益を上げていさえすれば、それで十分なのでしょうか?
企業が利益追求をするあまり、人権侵害や環境汚染、不正が行われてきた歴史的な背景があります。
だからこそ、利益追求だけではなく、環境や社会、ガバナンスに配慮した経営を行うことが求められます。
このような経営を企業が行うためには、やはり企業活動に必要な”資金集め”の段階からESGの観点を取り入れることが必要なのです。
投資家や金融機関が投資判断にESGの観点を取り入れ、投資を行うことによって、 企業もESGに配慮した事業活動を積極的に行うことができるようになるのです。
そうしてESG投資&ESG経営を続けていくことは結果的にSDGsに繋がっています。
このように企業がSDGsに取り組むにあたっては、資金集めの観点として「ESG投資」が深く関係しているのです。
企業がSDGsに取り組むメリット・デメリット
ここまで、企業がSDGsに取り組む意義について説明してきましたが、
どんなに社会的意義があろうと、経済活動を行う主体としての企業自身にもメリットがなければ、積極的な取り組みは見込めません。
企業がSDGsに取り組むメリット
企業がSDGsに取り組むメリットとして以下のようなメリットが考えられます。
・ビジネスチャンスにつながる
昨今の日系企業は、さらなる利益向上のために新たなビジネスチャンスを模索しています。
SDGsが掲げる目標は世界が直面している課題であるため、これを解決するための取り組みは新しいビジネスチャンスとも言えます。
さらに、国際的な社会問題の解決のために新規事業の開発、他業種、他業界との協業などビジネスチャンスを多分に秘めているブルーオーシャンと捉えることができます。
・企業のブランディングにつながる
企業ブランドというのは良くも悪くも企業の経営に大きく影響します。
SDGsが掲げている世界課題の解決に積極的に取り組む企業というのは、その企業の商品やサービスを受ける消費者にとって、「信頼できる優良企業」として評価されます。
これが結果的に企業の利益にもつながります。
さらに企業のブランドは優秀な人材の採用にも有利に働くようになります。
働く上で社会に貢献したいという人々が多く集まり、企業に良い影響を与える可能性があります。
・資金調達が有利になる
上記の通り、投資家や金融機関の投資判断として環境・社会・ガバナンスの観点を取り入れる「ESG投資」が重視されるようになっています。
そのため、SDGsに取り組むことは企業の事業活動にとって不可欠な資金調達に有利に働くと言えます。
企業がSDGsに取り組む際の注意点
経済活動の主体としての企業がSDGsに取り組むにあたって注意すべき点がいくつかあります。
・社会的価値と経済的価値の両立
企業の主たる役割は、経済活動であり、利益を生み出すことです。
そのため、企業にはSDGsに取り組む企業としての社会的な価値と共に、経済的にも利益を生み出すことが求められます。
どちらかだけでも、どちらかに偏ることもなく、両立することが求められています。
・SDGsウォッシュを防ぐ
SDGsウォッシュとは
実際は無関係の事業を行いながら、SDGsに積極的に取り組んでいるように見せかけて資金を調達しようとする活動のこと。
(NAMIMATIでは過去にSDGsウォッシュについての関連記事「うわべだけ?「SDGsウォッシュ」について知ろう!」がありますので、より深く知りたい方はそちらをご覧ください。)
上記に挙げたSDGsに取り組むメリットを享受するために、取り組んでいるように見せかけて実態が伴っていないビジネスになっていると、企業イメージや信頼が下がってしまうことになりかねません。
例えば、環境に配慮したビジネスを行っている一方で、児童労働や人権侵害が行われていたとなるとこれはSDGsの目標に沿ったビジネスとは言えません。
このような事態を避けるためにも、SDGsが掲げる目標に実態が伴っているかどうか吟味する必要があります。
(参考:日本企業がSDGsに取り組む目的・メリットは?企業の事例とともに紹介)
企業のSDGsの取り組み事例
ここからは、企業のSDGsの取り組み事例を紹介していきたいと思います。
SDGsへの取り組みの評価が高い企業ランキング2020(ダイヤモンド)の中でトップ3にランクインしている3社の事例を扱いたいと思います。
トヨタ自動車
トヨタ自動車では、気候変動への取り組みとして自動車から排出されるCO₂の量を削減する活動が行われています。
具体的には、電気自動車をはじめとする電動車の普及と新車から排出される走行時のCO₂の大幅削減を目標に掲げて取り組んでいます。
走行時にCO₂を排出しないゼロエミッションビークルや電動車の開発も積極的に行っています。
環境問題との関係性が深い自動車産業の代表企業が環境問題に積極的に取り組むことは非常に意義があることだと思います。
(参考:SDGsへの取り組み | サステナビリティ | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト (global.toyota))
アサヒビール
アサヒビールでは、海洋プラスチック・マイクロプラスチック問題に対する取り組みが行われています。
具体的には、2025年までにプラスチック容器を100%有効利用可能な素材にすることや環境配慮素材の開発・プラスチック容器包装を利用しない販売方法の検討などを目標に掲げて取り組みを始めています。
飲料商品には容器や包装がつきものだからこそ、それらに関係する深刻なプラスチック問題について取り組むことは重要なことだと思います。
(参考:持続可能な容器包装(プラスチック問題) | 環境 | アサヒグループホールディングス (asahigroup-holdings.com))
旭化成
旭化成では、化学メーカーとして環境への配慮・環境保全の取り組みを積極的に行っています。
気候変動の問題に取り組むべく製品ライフサイクル全体でのCO₂削減の取り組みや、産業廃棄物削減の取り組みとして、廃プラスチックの埋め立てをゼロにする目標を掲げて活動しています。
環境への負荷が高い事業を行う化学メーカーが環境への配慮を積極的に行うことは、環境保護への貢献が期待できます。
(参考:汚染と資源 | 環境 | サステナビリティ | 旭化成株式会社 (asahi-kasei.com))
おわりに
今回は、近年企業が積極的にSDGsに取り組むようになった理由について考え、日本を代表する企業のSDGsの取り組みをご紹介しました。
4月から新社会人として一民間企業の社員になった私も企業のSDGsの取り組みに積極的に関わっていきたいと心から思っています。
そして、これを見て下さっている皆さん(私も)が消費者として、身近な企業がSDGsに対してどのような取り組みをしているのか、実態が伴っているのかどうかを吟味して、購買・消費活動を行っていくことが私たちにできるSDGsの取り組みの1つだと考えています。